半熱風から熱風へ焙煎機の改造が完成し、いよいよテストローストへ。※この記事は「うまいコーヒーに出会うことは、うれしい事でもあり、悔しいことでもある。」「半熱風から熱風へ焙煎機改造。ついに完成」の続編です。
先ずは、今までのローストプロファイルを再現してみることに。するとコーヒーの味は焙煎機の改造前と大きくは変わらなかった。改造前と同様の味が作れることは分かったがそれでは意味が無い。
改造後の熱風を活かすには、固定観念に捕らわれず全く新しい概念で新たなプロファイルを作成する必要がある。それには、とにかく様々なアプローチでテストローストを繰り返し、片っ端からカッピングしてみるしかない。とりあえず40kgの生豆をテストロースト用に用意。
豆はコロンビア・ナリーニョ・ブルボン。コロンビアの豆は、硬くて水分量が多く、豆の芯まで火が通りずらく焙煎の難しい部類の豆である。豆本来の味を引き出すには技量が必要なのだ。ある意味コロンビアを飲めばそのロースターの腕が分かるというぐらいだ。
今までのローストプロファイルをベースに様々な設定を大胆に変更していく作業から始めていく。予熱温度、豆投入温度、中点、初期火力、排気ブロワーの出力、ダンパー開閉度。それら焙煎過程でのコントロール幅やタイミングなど調整するポイントは無限といっていいほど存在する。100人のロースターが同じ豆を同じロースト度合いに仕上げても100通りの味ができる所以だ。
とにかく固定観念を壊していく。これをやると上手く行かないといった経験値は一旦全てゴミ箱に捨てる。どうなるか分からないがやってみる。カッピングして検証する。それが新たな価値観を生み出し新たな常識をつくるのだ。
今までの概念とは逆説のことをやってみる。するとどうだろう・・改造前の半熱風では上手く出来なかったことが、改造後の熱風ではむしろその方が上手く行く。そんなエキサイティングな発見を機に劇的にローストが変化していく。
テストローストの5バッチ目くらいまでは、改造前に近いプロファイルだったが、10バッチを超える頃にはかなり変化。そして20バッチを迎える頃には全く新しいプロファイルへと変化していた。
カッピングでは、比較検討しやすいように、プロファイルの一箇所だけを変えたカップを並べる。例えば、豆投入温度が200℃ 150℃ 100℃とそれぞれ違えたカップだ。それ以外のプロファイルは全て同じにする。違いの要因を明確化するためだ。
そして良い要素を組み合わせたり入れ替えたりしながら一つのストーリー(プロファイル)を作り上げていくのだ。ブラッシュアップを進める度にどんどん味が良くなっていくのが分かる。そうなると、ここをこう変えたらもっと良くなるのではないか?という感のようなものが冴えてくる。
テストローストして、それらをカッピングして、改善点を洗い出して、またテストローストして・・それを繰り返すのだが意外にも時間がかかり、朝から番まで没頭しながらも数日に及ぶ検証となった。3日目で30バッチを超えた辺りで基本的なプロファイルが完成した。
結果として今までに無い程にシンプルなプロファイルとなった。今までは進行過程で都度コントロールする箇所が多かったのだが、新しいプロファイルでは最低限のコントロールで安定的な焙煎が可能になった。豆や釜の温度変化に逆らわず自然な流れでサポートする程度のコントロールだ。
テストローストの最終段階では、これが今までのコロンビア?と疑うほどのスペシャルティコーヒーが生まれた。目標としていた「とある場所でカッピングした一杯のコーヒー」に勝るとも劣らない出来だと思う。クリーンで華やかで甘味があって素材本来の旨みがしっかり出ている。
これで、自分の理想の焙煎にまた一歩近くことができた。しかし、またどこかでとんでもなくレベルの高いロースターに出くわすだろう。そこでさらなるチャレンジが始まる。MORIFUJI COFFEEは進化し続けるのだ。