なぜコーヒーの焙煎について語られることが少ないのか

焙煎

今の時代あらゆるジャンルのHow to本があります。コーヒーの焙煎についても書籍やWEBコンテンツが少なからずあります。私も概ね目を通しているつもりですが、想像するに需要の多さの割には供給が少ないのではないかと感じるのです。

焙煎に悩んだり、更なる良い焙煎方法を求めているロースターは世の中にたくさんいると思います。わたしもその一人です。


なぜ焙煎について語られることが少ないのでしょうか?

一つにはコーヒーの焙煎というものが確立されているようで、実は確立されていない進化形のものだからなのだと思います。

焙煎に関する書籍や情報を見るとその情報が作成された時の時代を感じることがあります。コーヒーは年々進化し続けていて、焙煎の技術に関しても少しずつ進化していることを感じます。焙煎の競技でもそう感じます。

ですから、焙煎について語るということはその時点での決め打ちとなりますから、ちょっとした勇気も必要なのではないかと思います。今書いたことを、一年後に同じことをしているのかと聞かれれば分からないところもあるからです。

2つ目には、焙煎を試行錯誤、研究するにあたり、膨大な時間や労力、研究開発費をかけていることが多く、培った技術やノウハウを簡単には教えたくないというところがあると思います。コンサルティングやセミナーといった形で限定した人を対象に有料でノウハウの共有が行われることもあります。

3つ目には、自分のスタイルを変えるつもりも無いし、言うつもりも言われるつもりもない。(自己完結型)

4つ目には、自分の焙煎が満点だとは思っていないから・・(進化・途上型)むしろ聞きいたし議論したいいぐらいと思っている人も多いのではないでしょうか。そういった声に応えるべくSCAA(SCAJ)などが主導してロースター(焙煎士)同士のワークセッションなども行われています。


美味しいコーヒーってどんなコーヒー?

そもそも美味しいコーヒーとはどんなコーヒーのことを云うのでしょうか?同じコーヒー豆でも浅煎りと深煎りでは趣向が異なります。また淹れ方でも変わってきます。そして良し悪しを判断するのは味覚・嗅覚などの人の感覚(官能)です。

それこそ人の好みと言い切ってしまえばそれまでですが、それではいつまでも美味しいコーヒーの議論は平行線のままで一向に結論が見えてきません。地域特性や国柄による嗜好を踏まえると官能基準はますますバラバラになって収拾がつかなくなってきます。

個人の趣味の範囲では好き嫌いでよいと思いますが、一方の商取引では評価するバイヤーによってコーヒー豆の価値がバラバラになってしまっては公平さに欠けてしまいます。

それではいけないだろう・・ということで、コーヒーの官能の基準や判断をある一定の物差し(共通認識)で世界的に統一しようとしたのがSCAACQIといったグローバルな団体であり、その団体が認定したワインのソムリエにあたるようなコーヒーの鑑定士が存在しSCAA/CQI 認定Qグレーダーと呼ばれています。

またコーヒーの抽出の競技なども盛んに行われるようになってきました。ですから今は、美味しいコーヒーの一定の基準は存在します。その一定の基準を満たすコーヒーを生み出せる焙煎がある意味良い焙煎の一つともいえるのではないでしょうか。焙煎の競技での審査はSCAA基準もしくはCOE基準によるカッピングでの評価が多いです。


究極のテーマ『最高ってどんな味?』

Qグレーダーの評価や競技での基準が全てとは思ってはいませんが、少なくとも参考にはなると思います。ネガティブな方向の味は誰にでも共通なように思えますし、もちろんポジティブ評価にしてもしかりです。

では満点(最高)ってどんな味?と聞かれるとどうなんでしょう・・そこは、ひょっとして、追い求め続けた末に見え隠れしてくる幻のようなものなのかも知れません。それを表現できる焙煎や抽出についてもしかりです。

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Tomomichi Morifuji

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