『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ③

前回の記事に引き続き『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 part ③ としてお届けします。

前回は様々な素材をテイスティングした後に一つのブレンドを作り上げました。今回は現代ハンドドリップの第一人者である尾籠一誠氏に抽出をお願いしたいと思います。

トモ: それでは早速ですがよろしくお願いします。

オゴ : よろしくお願いします。楽しみですね!

ogomori-issei-01

オゴ : よく現代の抽出技術は、少ない粉量でもしっかり成分を落として液量をたくさん抽出するという「抽出効率」を意識しますけど、場合によっては効率を下げた方が美味しくなったりするんです。

トモ: あえて抽出効率を落とす。いきなり興味深い入りですね!むちゃくちゃ聞きたいです。

ドリップ-豆計量

カッピングスプーン

オゴ : コーヒーは「香り・甘味・酸味・苦味」が基本の成分としましょうか。

オゴ : これは僕の考え方なんですが、グラインダーの質・豆の質を考慮した時、ネガティブな味を減らす状況を作るんです。

尾籠一誠-02

オゴ : 豆の品質が高ければ高いほど嫌な味は少ないので全部出すイメージが良いかもしれませんが、グラインダーはそう変更することはありません。今日はグラインダーがなんでも置いてありますが(笑)

トモ: グラインダーの検証とかしているうちに種類が増えてきちゃって・・マルケニッヒ(マールクーニック) – Mahlkönig のEK43が来てからは挽売りではEKを使ってます。このEKは東日本の100V50hz対応モデルの初回ロットのものなんです。

オゴ : そうだったんですね!さすが導入が早いですね。

マルケニッヒ-EK43

マルケニッヒ-EK43-2

メッシュサイズ

オゴ : 説明するより見た方が早いかもですね!ちょうどいっぱいグラインダーありますし(笑)では、EK43と他のモノで挽いたこの粒度見てください。

トモ: 結構均一性が顕著に違うよね。ばらつきが影響を及ぼすってことかな?

オゴ : もちろん、それも然りです。しかし、注意すべきは微粉率。

オゴ : 微粉の発生率はグラインダーの性能差によるところが大きいです。また刃が劣化してたりすると微粉が多くなります。微粉が多いと苦味・雑味・エグ味とか感じてネガティブな味が増えるというわけです。

トモ: なるほど、じゃあ例えば家庭で手挽きミルなんかを使ってる人へのアドバイスはありますか?

オゴ : どんなにハイスペックでも微粉は必ず出るのでそれを少なくするには、粗挽きになればなるほど微粉は軽減します。

オゴ : これを利用して中粗挽きぐらいで少し粉量多めで抽出がおすすめですよ。挽き目が粗くなると味が薄くなってしまうのを粉量でカバーのイメージです。

トモ: 結果的に同じ量を抽出するにも粉量を多めに使ってしまうから抽出効率下がってしまうってことなんだね!

オゴ : そうです。これがよく聞く、粉を多めに使うと美味しくなりやすいというカラクリです。

トモ: いやー、とても分かり易い!なんとなくは分かるけど微粉混入率まで計算した上での調整とは・・・

HARIOV60

オゴ : では、抽出してみましょう!粉をセットして表面を平にならします。

ハリオV60

オゴ : 一投目の蒸らしは、全体の粉が湯としっかり触れてる状態を作ります。濡れてない粉がなるべくないように。

オゴ : 蒸らす時間は基本約30秒ですが、膨らんで炭酸ガスが抜けきった瞬間になるべく合わせて二投目を注ぎます。

尾籠一誠-ハンドドリップ-蒸らし-01

尾籠一誠-ハンドドリップ-蒸らし-02

オゴ : 二投目から「の」の字を書くように中心から外へ行き、壁が1~2㎝残ってる状態でまた中心へゆっくり戻ります。

尾籠一誠-ハンドドリップ-2湯目-03

尾籠一誠-ハンドドリップ-3湯目-04

オゴ : 中央が凹んで1cm位になったら、三投目をまた同じように繰り返します。コーヒーの液量が適量に達したら終了。この三投で淹れるのがポイントです。

オゴ : 終わったらこのような形になるので、慣れるまでちょっと練習すれば結構簡単ですよ。

尾籠一誠-ハンドドリップ-抽出後-05

尾籠一誠-ハンドドリップ-抽出後-06

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オゴ : 出来上がったらしっかり混ぜてそのサーバーのまま香りを楽しむんです。

オゴ : ここが最高潮に香りが充満してるので淹れた人の特権ですね(笑)・・うわ、これきてますよ友さん!

尾籠一誠-ハンドドリップ-アロマ-08

尾籠一誠-ハンドドリップ-アロマ-09

トモ: どれどれ・・うわーきてるねこれ!すごい濃厚な果実感だね!アロマで美味しいかどうかって判断できるレベルだねこれ。

オゴ : まだ油断ならないかもしれないんでちょっと飲んでみましょう…。

尾籠一誠-ハンドドリップ-テイスティング

コーヒーサーブ

コーヒーサーブ2

尾籠一誠-コーヒー

尾籠一誠-コーヒー2

オゴ : くぅー!美味い!シンプルに美味いです(笑)

issei-ogomori-morifuji-coffee

トモ: ほんとに!?じゃあ私も頂きます。うわっ美味っ!

トモ: いつも思うんだけどオゴさんのドリップって円やかなんですよね。液体が優しく口の中に溶け込んでいくような・・優雅なコーヒーになるんですよ。

トモ: すべてを計算しながら、そして抽出過程における微妙な変化を感じ取り柔軟に合せて行く姿勢から生み出されるものなんでしょうね・・

オゴ : いやいやいや・・ありがとうございます。

トモ: やっぱりこのコーヒーはシングルオリジンでは表現できない複雑さがあるよね。特にアフターテイストに出てる。それでいてシングルオリジンに負けない特徴のあるフレーバーがすごいよね(笑)

オゴ : ほんと何て言うんでしょ、カッピングの時とはまた少し違う濃厚で赤黒い熟成果実が・・

トモ: そうそう・・え、今なんて言いました?

オゴ : 濃厚で赤黒い熟成果実が・・

トモ: それだ!BLACK FRUIT

トモ: BLACK FRUITって感じがしない!

オゴ : しますね!まさにBLACK FRUIT


連載記事

『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ①

『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ②

『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ③


※お知らせ

今回の記事で生まれた『 BLACK FRUIT 』を MORIFUJI COFFEE通販にて限定発売することになりました。

http://morifuji-coffee.com/item/1343/


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Tomomichi Morifuji

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