前回の記事に引き続き『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 part ② としてお届けします。
トモ: ブレンドに革命を起こす!という合言葉が生まれて前回の記事を締めくくったわけですが、今日は実際にテイスティングを行ってみたいと思います。
オゴ : いやぁ~待ちわびましたよこの時を。面白いのが出来るといいですね!
トモ: 既成観念にとらわれずに自由な発想で大胆にいきましょう!
トモ: 一般的なブレンドの考え方は【 個性 × 個性 = 喧嘩する 】という図式があって喧嘩しない親和性の高い素材が重宝がられるんです。
トモ: しかしですよ、今回はそのあたりを分かった上であえて【 個性 × 個性 = 新たな個性 】というところも狙いつつやってみたいと思います。
トモ: 素材集めの段階からブレンドに使うという先入観を排してシングルオリジンとして個性豊かな豆をセレクトしました。
オゴ : 12種類ありますね・・この光景みたら魂に火がついてきました。
トモ: COEクラスのトップクオリティーの豆も普通に混じってますよ!
トモ: 焙煎度も浅煎り~深煎りまでバラバラで、それぞれの豆の個性が発揮できるポイントで煎止めしてます。
トモ: 先ずは素材となるシングル単体としての風味をカッピングで確認してみましょう。先入観を排したいので銘柄名を伏せてブラインドカッピングでいきたいと思います。
オゴ : このワクワク感は最高ですね、改めて発見することが多いブラインドでやるのが一番好きです。
トモ: ドライフレグランス(粉の状態の香り)を確認しましょう!
オゴ : このDはすごいですね!まさに果実を凝縮したような・・もう笑っちゃうやつです(笑)
トモ: それ きてるよねぇ・・
オゴ : このAも良い感じですね。そうそう、僕もチャンピオンになった時はまだドライってあまり分からなかったんですが経験が大事とはよく言ったものですよねほんと。
トモ: 液体にする前にドライの段階でなんとなく想像ついちゃうこともあるよね・・
トモ: それでは注湯しましょう。
トモ: 注湯後4分経過。ブレイク。
( ※ ブレイクとはカップ表面に浮いたクラスト(粉)をスプーンで攪拌し沈殿させることをいいます。ブレイクの際にはカップに顔を近づけて立ち昇るアロマを確認します。その後沈殿した上澄み液をテイスティングします。)
オゴ : うんうん、どれも結構いいですね。なんだろう…普通こういうの直観的にこれは無いなって1個ぐらい混じってるのが多々あるんですけど全部美味しくないですか?
トモ: ありがとうございます。
トモ: その中でも一番キテルなぁっての・・もう決まっちゃったりしてる?
オゴ : これかな・・ってのはありますね。
トモ: じゃあ・・せーので指さしてみようか。
オゴ : このDはやはり想像した通り・・ポテンシャルが凄いの一言です。
オゴ : Dは結構ロースト深くないですか?それでもこれだけ果実感出てるのはあまり出会ったことないです。もちろん、ビターはありますけどそのビターも全然質が高い。
トモ: Dは素材が特別良いのと、深くローストしても生き生きとした素材の持ち味が残るようにRBDかけてるんだよ。
※ RBD(Round Bitter Development)とは
オゴ : ローストが深いのにカラメル化が絶妙で、果実感がぎゅっと濃縮された甘さと言うか・・媚びるわけじゃないですが、正直言ってよくこの焙煎できたましたよね友さん(笑)
トモ: いやいやいや・・実はテストローストで結構泣き入ったんですよ。コレ(笑)
トモ: それにしてもDが相当気に入っちゃったみたいな感じだね。Dを軸に考えてみようか。
オゴ : いいですね。
トモ: 経験的にDのようなタイプにはAタイプのものが意外と合うんだよね。Dが持ってない要素を補完する感じで。
トモ: ちょっとやってみようか・・
トモ: どうぞ・・テイスティングしてみてください。
オゴ : いやぁ・・シングルでは無かったピーチのような感じが生まれてますね。これはヤバイんじゃないですか!
トモ: どれどれ・・・えっほんとだ。
オゴ : うんうん。いきなりいい感じですね!
トモ: この組み合わせは行けるね。あとは配合比率とその他に何か加える必要があるか検証をしてみよう。
その後、しばらく検証作業がつづく・・・・
トモ: だいぶ絞れてきたね。
オゴ : そうですね。だいぶ悩みに悩みましたが抽出することも考慮して最終的にこの左側のがいいかもですね。
オゴ : これ・・相当ヤバイですよ。日常的に飲みやすいのにシングルみたいな特徴があるというか、こんなブレンド売ってるところはっきり言ってまだ出会ったこと無いです。
トモ: うんうん。このブレンドの素材を特定するのが難しいくらい新たな風味に仕上がってる。
オゴ : これ言われないと素材わからないですよ。いや、言われても分からないかもしれません。
オゴ : なんかプルーンエキスのような濃蜜感が出てきましたね。
トモ: 熟したプルーンやカシス、ピーチのようなドロッとした果実感。カラメルのような甘さ。心地よい適度なビター感。
トモ: それでいて重くなりすぎず液体のクリーンさがある。何とも絶妙なバランスだね。アフターも甘さの余韻が長くつづく。
オゴ : いやいやいや・・・大変なことになってきましたね。正直コーヒー飲んで心底美味しいっていうことも少ないんですが、これはほんと美味しいですよ。
トモ: オゴさんはそれこそ色んなコーヒー知ってるし、何よりも追及が半端ないから、美味しいって言わせるの至難の技ですよ。
トモ: 正直いうとオゴさんにいつかホントの意味で『 美味い 』っていわせてやる! ってのがロースターとしての自分の目標でした(笑)
オゴ : いやいやいや・・・まさかの展開です(笑)
オゴ : これ・・お店でCOE入賞ロットなんですってコーヒー出されたら、納得しちゃうやつです。ブレンドだってのが信じられないですよ。
トモ: むちゃくちゃ嬉しい(泣)
オゴ : これ早速ドリップしてみないですか?ポテンシャル凄そうなやつと出会うと早く抽出してみたくなるんです(笑)
トモ: オゴさんの伝家の宝刀 ハンドドリップ 是非お願いします!
『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ③ ヘ続く
連載記事
『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ①
『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ②
『 ブレンドはシングルオリジンを超えられないのか? 』 尾籠一誠 & 筆者対談 ③
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