2014年6月にイタリアで開催されるハンドドリップの世界大会( World Brewers Cup )に日本代表として出場する尾籠 一誠 選手( オゴモリ イッセイ : サザコーヒー所属 )の公開練習に参加してきました。場所はサザコーヒー 東急二子玉川店。
尾籠 一誠 選手は、japan Hand Drip Chanmpion Ship 2013 優勝、Japan Brewers Cup 2014 優勝、という輝かしい成績を収め、ハンドドリップの世界では現在日本の第一人者として活躍している人物。また相当のイケメン。
本日の趣旨は、ハンドドリップの日本チャンピオンの尾籠選手が淹れる、世界一のコーヒー「パナマ エスメラルダ ゲイシャ」を味わえるという非常に贅沢なメニュー。それも世界選手権で行う予定の内容とほぼ同等のことを実演していただけるという、真の世界レベルのコーヒーが体験できる貴重な機会。
世界大会で使用する予定のコーヒー豆は「パナマ エスメラルダ ゲイシャ ミディアム ライト ロースト」ミディアムの浅めの焙煎度合いで、一般的に飲まれるコーヒーとしてはかなり浅めの部類に入るが、豆の持つ個性やフレーバーが活きるローストだ。焙煎機は半熱風式の25kgとのこと。メーカーや機種に関してまでは聞けなかった。
世界大会で使用する器具を解説
グラインダー(コーヒーミル)は、「DITTING KFA-903」ハイエンドのカット刃グラインダーの定番だ。これも世界大会の会場に持ち込むという。当然、使用するグラインダーでコーヒーの風味も変わってくる。
ドリッパーは円錐形のペーパードリッパー「HARIO V60透過ドリッパー クリア VD-01T」これも日本では定番だが、今や世界的な定番となりつつある。国内ではHARIO V60と双璧をなすKONOドリッパーよりもリブ形状の違いにより抽出が早く進む。
ドリップポットは「HARIO V60レンジサーバー600」とV60シリーズで統一感がある。また、ドリッパーとポットは「HARIO V60 ドリップスケール VST-2000B」の上に置き、湯の量と時間を正確に計測しながらハンドドリップを進めていく。
そして使用する水は、NASAのテクノロジーで不純物を限りなく除去した超純水の「NASA 水」通常の水に含むミネラル成分は良くも悪くも風味に影響を与えるが、超純水であればミネラル分によって風味がブレることはない。
ハンドドリップを解説
DITTING KFA-903にて細目に豆を挽く、メッシュサイズはエスプレッソ用かと思うぐらいかなり細かい。それを3段階のふるいにかけメッシュを精密にスクリーニングしベストなメッシュサイズを作る。微粉(マイクロパウダー)は除去。
メッシュの選別について語る尾籠選手
湯は全部で三湯に分けて注ぐ。一湯目はむらしの30秒。二湯目は一湯目と同量程度。三湯目で残りを一気に注ぐ。注ぎ方はスピーディーかつ大胆でペーパーの端まで湯をかける。ドリップ工程は全部で2分30秒。
一般的にペーパードリップのマニュアル的なものでは、ドリッパーの中心付近に湯を落とし、ペーパーの端まで湯をかけないとされる。これは主に横漏れを防ぐ狙いがあると思うのだが、豆に均一に湯をいきわたらせることを重視しペーパーの端まで湯をかける必要性があるとのこと。
但し、このドリップ方法は、全ての豆に対して適応できるものではない。ある条件が満たされる必要がある。その豆の条件とは高品質、浅めの焙煎、メッシュをスクリーニングし整えたものである。
ペーパーの端まで湯を注いでいる。
なみなみと湯を注いでいる。
コーヒーをいただく
提供されたコーヒーは3種類。パナマ エスメラルダ ゲイシャのミディアムライトローストのメッシュを整えたものと、そのままのもの。メッシュ以外の条件は全ておなじだ。それとサザコーヒーで通常販売されているブレンドコーヒー(フルシティーロースト)
まずは、ゲイシャのメッシュを整えていない方が提供された。ナチュラル精製らしい、どことなくオリエンタルなフレグランスとドライフルーツのような甘酸っぱいフレーバー。
間髪いれずに2杯目が提供される。ゲイシャのメッシュを整えたものだ。キラキラした明るい酸味、マウスフィールもよりスムーズだ。アールグレイやジャスミンのような花のようなフレーバー。レモン、オレンジといった柑橘系フルーツのフレーバー。パイナップル、ピーチなど粘性のある甘味も想像させる。
アフターテイストも明るく甘酸っぱい余韻がどこまでも続いていく。これがナチュラル精製かと疑いたくなるような、まるでウォッシュト精製のような明るさや透明感に驚かされる。それでいてナチュラルの甘味があるのだ。
ゲイシャでも、メッシュを整えたものと、そうでないものとでは、これ程風味が違うものかと驚かされた。まるで違う豆のようだ。整えた方はキラキラとして明るく軽い。一方整えていない方は、カップが暗く重くなる。あくまでも双方を比べた場合の違いだが・・
写真左側:メッシュを整えたもの
写真右側:そのままのもの
写真のピントが合っていないが、メッシュを整えていないそのままの方はアクが多く出ているのがわかる。
自分で淹れる際は、メッシュサイズを競技レベルまで完全にを整えられないにせよ、少なくとも、微粉(マイクロパウダー)だけは少ない方が良いということを痛感させられた。
そして最後に提供されたのは、サザコーヒーのオリジナルブレンドコーヒー。ゲイシャの後に提供されたということもあり暗い印象に感じてあまり飲む気がしなかった。でも決して美味しくない訳ではない(汗)ゲイシャの後というのが悪いのだ。
コーヒーTDS(コーヒー濃度計)にて、パナマ エスメラルダ ゲイシャのメッシュを整えたものの濃度を計測。値は1.29 競技では 1.2 ~ 1.4 が美味しい濃度とされていると聞いた。日本で一般的に好まれ飲まれているコーヒーはそれよりも濃い目。
最後に世界大会に向けての準備や練習の話。サザコーヒーからはスタッフを含めて6人でイタリアの会場に入るとのこと。物流のトラブルなども考えられることから、豆など大会当日には欠かせないものは6人で分散して持ち運ばれる。またグラインダーなどの重い器具も含め会場に全て持参して持ち込むとのこと。世界大会に出場するには綿密な計画と準備が必要なのである。
尾籠選手の練習は、いつも仕事から家に戻って夜11時頃から黙々と行っているとのこと。抽出レシピを確認しながら微妙な調整を行っているそう。本人曰く「楽しいものではない」と謙遜されていた。
世界大会 World Brewers Cup まであと少し。お世辞抜きで、尾籠選手の淹れるパナマ エスメラルダ ゲイシャは感動的に美味しかった。もし他の選手が同じ豆を持ち込んだとしても、きっと違った味や評価になるでしょう。
尾籠 一誠 選手 日本代表として世界チャンピオンを取ってください。心より応援しております。刺激的な時間をありがとうございました。
世界大会 World Brewers Cup の模様は、動画で中継されるそうです。詳しくはサザコーヒー 東急二子玉川店のFacebookより。
最後に記念撮影