今回のトリップドリップは真冬の長野県の美ヶ原高原の山頂よりお届け。この地は標高2000メートルあり、およそ富士山の5合目と同じ高さ。気温は今の季節だとマイナス15℃位まで下がる。空気の薄い氷点下でトリップドリップのチャレンジだ。果たして結果は如何に。
「気持ちのいい場所に行くと美味しい珈琲が飲みたくなる。」そんな一杯を味わうために各地を旅し、そこで見つけたナイスなロケーションにてアウトドアコーヒーを淹れる。もちろん珈琲豆は私が自家焙煎したMORIFUJI COFFEEのスペシャルティコーヒー豆を持ち込む。題して「TRIP DRIP」
美ヶ原高原の山頂。この場所には以前訪れた時がある。雪が溶け春の芽吹きが始まる5月初春の頃だった。現地に詳しい人が言うには、1月後半~2月前半の一番寒い季節が最も美しいという。なんでも見渡す限りの雪原と幻想的な霧氷が見られるとのこと。そして今回遂に真冬の美ヶ原高原を見ることができた。山頂の王ヶ頭ホテルに宿を取り活動の拠点を確保し、マイナス15℃に耐えられるようなスキーウェアを調達、かつヒート効果の高いインナーを数枚重ねて着込んだ。それでも未体験の寒さに耐えられるのかは定かではない。
山頂は風がとにかく強い。うまく風を遮れるような場所で、かつドリップポットを置けそうな所を探す。まずこの状況で湯沸かしができるかどうかだ。ジェットボイルの許容環境温度はマイナス5℃。既にその温度を下回っている。しかも空気が薄い。案の定、点火しようとするがなかなか火が着かない。火が着いたと思いきや強風で消されるの繰り返し・・ガスが少しでも出やすくなるようにとガスボンベを手で温め、火が風で飛ばされないように体全体でジェットボイルを覆いながら、何とか沸騰させることに成功。
ハンドミルで珈琲豆を弾きドリッパーに移したが強風で粉が舞い上がって飛んで行く。一方、先ほど沸騰させたお湯がみるみるうちに冷えていくではないか・・再び湯を沸かしミルで豆を弾き繰り返し、もう無理なんじゃないか諦めようと思ったが、風が止んだ瞬間を見計らいドリップ開始。
今回のスペシャルティコーヒーは「エチオピア イルガチェフェ G1 ウォッシュト ミディアムロースト」ジャスミンのようなフローラルとレモンのようなフルーティなフレーバーが特徴。
ドリップケトルの先端から落ちる湯からは、いつものような湯気が出ていない。湯の温度は低く、出てくる抽出液も薄い色をしている。それでも構わないと半ばやけくそ気味になりながらもドリップ完了。で・・お味の方はというと「薄い」「でもまんざら悪くはない」
抽出後のドリッパーを片付ようと目をやると、そこには通常ありえないような光景が目に飛び込んできた。なんと、ドリッパーの中で出し殻の粉が凍っているではないか・・ドリッパーを持ち上げて見ると粉は微動だにしない。試しに逆さにしてみたところ落っこちてこない。温度計を見てみると針はゼロを超えマイナスに振り切っている。そこで改めて今回のトリップドリップは無謀なチャレンジであったと悟ったのだ。
「氷点下のアウトドアではドリップするべからず。」