夏に向けて気温が上がってくると途端に焙煎が狂いだす

ここ神奈川では連日36℃の猛暑が続いています。「Climate.gov」では、2015年6月は1880年以来最も暑い6月で今後も他の月が記録を塗り替えることになるだろうと言っています。

そんな中、MORIFUJI COFFEE Roast Factory の焙煎室では、日中は40℃を越える猛暑に包まれています。半年前の温度計が0℃を指していたのがうそのようです。夏と冬とでは40℃近くの温度差があります。これが今の日本です。

40℃の気温差は焙煎において大きく影響してきます。夏は取り込む空気自体がある意味40℃高い訳ですから必要な火力も少なくて済みます。・・・いえ。言い換えます。火力を使えない状態で焙煎を完成させなければなりません。

「春から夏に向けて気温が上がると途端に焙煎が狂いだす。」ロースターから良く聞く言葉です。

世の中に一番多く普及している回転ドラムのコーヒー焙煎機は大きく3つの熱により生豆へカロリー供給しています。一つ目は火力により熱せられた熱風(対流熱)。二つ目は熱せられた回転ドラムに生豆が接触することによって伝わる伝導熱。そして釜全体から包み込むように伝わる輻射熱。この3つの熱の状態をイメージしながら焙煎を進めていきます。

「イメージしながら」という抽象的な表現をしたのは、熱風の温度はある程度正確に計れますが、伝導熱や輻射熱の計測は現在の焙煎機では困難だからです。3つの熱の状態、そして配分をイメージしながら焙煎を進めていくことになります。

話を戻します。気温が高い分、火力を絞れば同じカロリーが得られるように思えます。確かに冬に比べ火力の必要は少なくて良いと思いますが・・・しかし火力が弱いと経験的に豆の芯までカロリーを通しずらくなる傾向があるように思うのです。

この不足する火力というのが、対流熱のことなのか伝導熱なのか輻射熱なのか、果てまたそのバランスなのか・・・残念ながらその確信に至ってはいません。

豆の芯まで適切なカロリーを供給できないと、生豆の水分をある段階までに適切に抜くことができず不完全のまま焙煎が進行してしまいます。こうなると散々な結果が待ち受けています。

辛さにも似たツンとした渋み。暗く沈んだアフターテイスト。香りがしない。液体が薄い。焙煎後の風味の変化が激しい。1週間もたない。などの害が出てきます。

しっかりと生豆の水分を抜くプロセスを経る必要があります。焙煎の基本とも云えることだと思いますが、気温が高まる程その基本がぶれていないかを意識させられるのです。

火力をある程度上げながらも豆温の上昇を抑える方法として、焙煎開始時に生豆を投入する際の釜の予熱温度を下げ、中点(ボトムの温度)を低く取る方法があります。出足の温度が低い分火力を上げられるという単純な原理ですが効果的な方法でもあると思います。

しかし、自分で実際に行いながらも、果たしてこのアプローチがベストなのか・・ もっと良い方法がないのだろうか・・ と同時に考えています。釜の構造や能力が違えばもっとスマートなアプローチがあるのではないだろうかとも・・・

こんな構造の焙煎機があったら・・・ こんな能力のある焙煎機が作れたら・・・ 妄想は膨らんでいきます。

焙煎していると自分がやっている色んなことが気になり始めます。そして眠れなくなります。そして焙煎機を廻し始めます。寝不足になります(笑)

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Tomomichi Morifuji

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